栽培方法(実生)
実生 栽培
実生(種子)よりの育成方法について以下の内容でまとめます。
栽培行程 | 実生栽培での生育の流れ |
種子採取 | 種子の採取方法 |
種子の高温処理 | 温度処理の方法 |
種の播き方 | プランターと畑の種の播きかた |
栽培行程
0年目 | 7月~8月 | 開花 |
11月 | 成熟した花が種になるので、種子を採取 | |
12月上旬 | 高温処理開始 | |
冬 | 地下発芽して小球根が生じる | |
1年目 | 2月 | 種を播く |
3~4月 | 地上発芽 | |
春から夏 | 球根が成長 | |
秋 | 地上部が枯れて休眠する | |
2年目 | 1月~2月 | 発芽 大部分は1年目よりは少し幅広い1枚葉がでてくる 一部は茎が伸長し数枚の葉が出るものがみられる |
11月 | 生育が良くて茎が立ったものが多ければ植替えを行えるが、 茎立ちしていない球根が多い場合は、そのままもう一年据え置く |
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3年目 | - | ほとんどが茎立ちする |
11月 | 掘上げ植替える | |
4年目 | 6月 | 球根の肥大に努める場合は、蕾を折りとる |
7月~8月 | 開花してくる | |
秋 | 開花球として活用できる大きさになる しかし、開花しない球根や小さい球根や木子はもう一年栽培をする |
種子採取方法
- 11月上旬に生育地を回って、莢が割れる寸前ものを採取する。
- 採取した種は、莢のまま日陰に広げ数日間湿り気がなくなるまで乾かす。乾いた種子は風で飛ばして選別する。
- 乾いた種子は風で飛ばして選別する。種を一つかみして50cm程の高さから少しずつ 落とし、軽く薄く小さい種を風で吹き飛ばす。これを何度も繰り返し下に落ち た厚みのある重い種を集める。
種子の高温処理
高温処理とは
カノコユリの種子は、通常播いた翌年の秋に地下で発芽し小球根を形成します。その後、地上発芽せずに休眠し、冬の低温を受けてその翌年の春、地上に発芽してきます。夏の高温と冬の低温を受けて、ようやく1年以上かけて地上に発芽してくるようになっています。
この、地上発芽までの期間を短縮する方法として、種子の高温処理が知られています。すなわち、高温(夏)で種子の休眠を打破し、中温(秋)で地下発芽を促し、低温(冬)で再休眠を打破して、4カ月程で地上発芽を促す高温処理技術を活用し、開花期間を一年間短縮する方法があります。
温度処理の前準備
- 温度処理がしやすいように、選別した種をポリエチレンの袋に分ける
- 乾かした種を200mlのコップ一杯(約3000粒)、バーミキュライトをコップ 3杯、さらに水をコップ一杯加えてよく混ぜる
- 保温方法は市販の恒温器を用いるか、自宅にある電気座布団か電気アンカ、ハッポースチロール箱、それに温度調節用のサーモスタットがあればで代用できる
- ポリ袋の入れ温度変化のない暗い場 所に保管する
左:種子+バーミキュライト 右:種子 左:水を加えたもの 右:水を加える前 カノコユリ種子:200ml
バーミキュライト:600ml
袋づめした水200mlを加えて密封する
高温処理の行程
行程 | 温度 | 期間 | |
1 | 高温処理 | 35℃ | 2週間(1週間でも可) |
2 | 中温処理 | 25℃ | 6週間 |
3 | 低温処理 | 通常は5℃ | 6週間 |
高温処理実施例
12月1日 | 高温処理を始める |
1月上旬 (中温処理の中頃) | 発芽し小球根を形成し始める |
1月末 | 地下発芽した小球根が休眠する |
2月 | プランター又は畑に播いて自然低温に合わせる |
3月~4月 | 地上に発芽してくる |
電気アンカを用いた簡易な高温処理 保温気に入れた状態 温度処理を始めて1か月ほどで地下発芽 布をかけて保温する
種の播き方(プランタ)
プランタへの種まき方
プランター | 通常使われている長さ60cmのプランター(容量15リットル程度)を用いる |
用土 | 水はけ水持ちがよく、ごく少量の肥料をもったものとして、赤玉土の小粒、腐葉土、鹿沼土の細粒を1:1:0.5で混合したものを用いる |
肥料 | カノコユリは初期の成長が遅く、成長量も少ないことから肥料は入れず、腐葉土が持つ肥料のみとする |
肥料を入れた場合 | 軟弱に育ち病気が発生しやすくなるなど、かえって生育が悪くなります |
種の播きかた | 用土を八分目まで入れて平らにならし、200粒をバラまき丁寧にほぐして広げ、同じ用土で1~2cm程覆土します。さらに、その上に腐葉土を1~2cm覆う |
置き場所(4月まで) | 播種後は十分潅水を行い、午前中は陽があたるが午後は日陰になるような半日陰の場所に置く |
日差しが強くなる5月以降の管理 | 寒冷紗で日覆いを行い、強日光を遮って葉が黄色くなって枯れないように日射量に注意を図り管理する(葉が早く枯れると球根の太りが悪いので、できるだけ遅くまで緑の葉が残るようにする) |
実生の土づくり 種まき 間隔調整 種を箸で5列×5列(25個)に並べる カノコユリの種子 種が見えなくなるように覆土をする
成長過程
遮光しすぎると軟弱になる 直径3㎜程度の小球根となっている 発芽状況 左:寒冷紗2重被覆下右:樹木の下の半日陰
3年後の状態
掘り上げた球根 茎立ちしたカノコユリ 開花したカノコユリ
種の播き方(畑)
畑への種まき
適した土壌 | 赤土の粘土分の多い埴土から埴壌土であり、排水の良い傾斜地 ※宗像に多く分布する真砂土は生育が著しく劣る |
種子の量 | 1m2に60ml(1000粒程度) |
播きかた | からみあった根や種子と小球根が切れないように丁寧にほぐし、均一にばらまきます。 その後、ピンセットで間隔が均等になるよう間隔を調整し、その上から、プランターで用いた用土と同じ用土で種子が隠れる程度覆度します さらに、その上に腐葉土で土が見えない程度(2~3cm)覆い、十分に潅水する |
管理方法 | 黒色のダイオネットで覆い遮光して、乾燥しないよう注意する。地温の上昇を嫌うので、夏場は切り藁を敷くなどして、地温の上昇と乾燥を防ぐと生育が良くなる |
管理機で耕耘 板で区切って幅1m程度の畝を作る 10㎝幅の中に種子を播き、20cm空けて種子を播いていく 蒔いた種 強い日差しを抑えるために、黒の寒冷紗かダイネットで日覆をする 発芽したカノコユリ
日頃の管理
日頃の管理方法については「植付後のカノコユリの育て方」を参照ください。